「参考書ルート」崩壊の予兆

 「魁!単語塾」は出版されなくなったそうだ。
 理由は二つあって
1.新課程に対応する参考書の作成、出版は目白押し。英単語帳の優先度はどうしても低くなる。
2.出版不況で余力がない。
のだそうだ。
 東京ビッグサイトやインテックス大阪で「うすい本」が飛ぶように売れているところを見ると
「印刷/出版業界はまだまだ元気!」
ような印象を持ったのだが「それに頼らなければならない内情を察しろ」。

 小学館の学習雑誌ですら少子化の影響で軒並み休刊となった時代だ、参考書の編集/出版も売り上げが見込めず、先細りになったのは仕方がないのだろう。
 しかしそうなると、またもや受験勉強に地殻変動が起こることになりそうだ。
 ちなみになぜ雑誌が「廃刊」でなくて「休刊」というかというと、廃刊にすると各雑誌に割り振られた出版コードをという既得権を返却しなければならないからだそうだ。この前時代的な構造も見直さないと、という気はするのだが。

 以前、「ゆとり教育」の導入時、私立中高一貫校がそれに沿わないカリキュラムを使って進学実績を上げるビジネスモデルを作り上げ、置いていかれた公立高校の生徒は、いわゆる「参考書ルート」を使うなどの自主学習をして大学受験に備える、という事象を指摘した。ところが新課程に合わせた参考書の供給が細るとすると、その「参考書ルート」の存続が危ぶまれることになる。
 つまり公立高校がさらに不利になる、と。

 そうなると教育委員会としてはオンライン教材として参考書を早くでっち上げて、マンガ配付で培われたアクセス制限のやり方を適用し、文部科学省肝煎りのタブレット端末で閲覧、というインフラを早く立ち上げねばならないことになる。一方、私立高校は、当然にそのような仕組みが作れるに100%違いないのは天地の理であることは確実。出版社は・・・無理だろう。自分のよって立つ「紙」という基盤を崩すわけにはいかない。(つまりZ会、駿台、河合、といった出版部署を持つ予備校もなかなか踏み出せないことになる。)

 気になるのは大学入試問題を作る側が新課程に対応するかどうか、だ。
 東大、京大、早稲田、は初めから新課程なんて気にしてそうもない。ところが地方旧帝大、慶応以下はそれなりに忖度しているような気がする。旧課程の中高必修英単語3000語で出題文をカバーする範囲がきれいに九割程度と揃っているのが偶然とは思えない。文中の倒置や並列もきれいに刈り込まれている印象だ。ただ、ここ1〜2年は「持合い」じゃなかった「様子見」で推移するような気はする。ちょうどいい言い訳もある。「既卒生に配慮して」。だから新課程への「参考書ルート」の対応が遅れても、全体では何とかなるのかな。
 もっとも既卒生を別枠で選抜する共通テストについては、それこそ文部科学省の威信をかけて「新課程対応」とするだろう。これがどうなるか、全く予想がつかない。理科、社会科みたいに範囲がはっきり見えるものは対応も可能なのだろうが。共通テスト利用入試のボーダー、今年のデータがまるでアテになりそうもない。
 というわけで、みなさま「都合の悪いことは起こらない」という、ここ30年、日本で支配的になった共通意識に従って行動することに決めたようだ。

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